
朝、目を覚ますと、机のうえに郵便物が置かれていた。中身は本のようだ。
「なんだ?」
寝呆け眼のまま開けてみると、やっぱり本が入っていた。
【クシュラの奇跡〜140冊の絵本との日々】
[絵本を友として人生を歩みはじめたある障害児と家族の感動の物語]
宛先はオレで間違ってなさそうだ☆でも誰が…
「あっ!和尚先生!!」
和尚先生←ホントの名前をいじってある☆
はこの3月に卒業した保育短大の教学顧問の先生。
フリーターだった僕を、短大に導いてくれた人。
天気が良かったから、外へ飛び出して、公園で電話をかけた。
『お〜坂口くん!届きましたか。それはそれは。』
僕は和尚先生には本当に感謝している。《聞かせ屋。けいたろう》もすごく喜んでくれているし…
でも、何よりも、和尚先生と出会っていなかったら僕はあの短大に入らなかった。
■□■□
3年半前、僕はフリーターをしながら、保育短大を受験しようと学校探しをしていた。
ある時、短大の合同説明会があった。
僕はその時、何もわからなかったから、とりあえず行った。
たくさんの学校の先生と話をするチャンス!
通学圏で男が通える保育短大は、ほんの数校。
それだけは分かっていた。分かっていたけど…
『うちは音楽大学と併設ですから、いつでもピアノが弾ける環境だし、ピアノは音大の先生が…』
『男?一昨年から入れるようになったけど、まだ就職の例はないね〜。
まぁ、ここまで説明は出来るけどさ、実際は来てみないとわからないからさ、足を運んでみてよ!』
『男性も入れるけどね、そこからの通学は…う〜ん、あまりお薦め出来ないなぁ。○○短大のブースとか行った?』
不安でやりきれない気持ちになった。
そんな中でちょこんと座っていた白髪の和尚先生。
「すみません、僕、フリーターで22歳なんですけど、保育の道に進みたくて…」
『大丈夫ですよ。お話を聞かせてください。』
「僕、高校卒業して、音楽の道へ進んで…挫折して…アルバイトで子どもと出会って…」
保育関係で頼れる人もいなかったし、こんな動機で保育に進んでいいのかもわからなかった。
初対面だったけど、自分を分かってほしくて、夢中で話した。
いらんことまで、熱く(笑)
『大丈夫ですよ。
でも、君は男だから、入学することで完結してはいけない。その先の就職まで見据えましょう。』
「こくっ。(うなずく)」
『君はいつか家庭を持ちたいでしょう?
その時に、保育の世界で十分な給料をもらえるか…。実際は限られています。
まずは公立を目指しましょう。
君の気持ちがあれば、出来るはずです。
一年目から勉強しましょう。』
「まだ、公立とか私立とか保育園と幼稚園の違いもよく分かってないですけど…俺は自分の家庭をしっかり支えたいです。」
『今はそれでいいと思います。
うちの学校はほとんどが高校上がり18歳の女の子、その中で君の気持ちと経験はきっと良い影響を与えてくれる。
是非うちに来て欲しいです。
でも、君にもっと合う学校もあるかもしれません。
色々見て、君に合うところに行ってください。』
「…わかりました。
めちゃめちゃうれしかったです。今まで不安ばっかりでしたから…。」
『いいんです、それでいいんですよ!』
■□■□
こんなに鮮明に書けるほど覚えてるの。
大切な出会いだったの。
でも、俺は若かった(笑)
その頃燃えてた少林寺拳法の信念と、学校理念が重なるところがあって、そこに一目惚れ。
受験して…
落ちる!!
友達のアドバイスも聞かず、それ一本にかけていた俺は、意気消沈。
「もう俺…保育やんなってことかも。今年入るのやめるわ。」
でも、
『学校はどこでもいい、君がその中で何をするかです!今ですよ!燃えていた君は輝いていました。』
とある人に言われる。
あそこしかない。
俺を求めてくれた和尚先生、こんな俺でもいいだろうか…。
鬼の倍率、二次募集…
合格!!
滑り込み大大大セーフ!!
和尚先生と出会っていなければ、きっと一年を棒に振ってた。
おばば先生にもマキ先生にも絵本の母パンダ先生にも会えていなかったし、そしたら《聞かせ屋。》できてねぇよ。
今の保育園の先生達との素敵な出会いもなかったわけだ。
本当に俺を拾ってくれた人だよなぁ和尚先生。
俺が就職蹴った時は、腰抜かすほど驚いていたけど(笑)
ごめんね〜和尚先生、心配ばっかりかけて。
でもさ、あの時言ったことは守るよ。
ちゃんと家庭持って、しっかり支えるから。
今、それに向かって心も人脈も広げてるところだからさ。
本当にありがとうございました!和尚先生!!
長いお仕事お疲れさまでした。
俺救われましたよ、先生がいてくれたから。
坂口慶