路上のSoul
彼は、来なかった。
『来れるかどうか分からない』
そう言っていたのかもしれない。
急な予定が入ったのかもしれない。
それは、仕方のないことだ。
一昨日の木曜日、路上をやりに行ったら、その場所にヴァイオリニストが居た。
とりあえず、見た。
今年に入ってから、ヴァイオリンに縁がある。
この日もそうだった。
しばらく見ていると、彼は俺に話しかけてきた。
俺は、自分もストリートパフォーマーであることを話した。
トランクを開けると、彼はすごく良い顔で俺を見た。
だから、
セッションを申し入れた。
[ねずみくんのチョッキ]
彼に見せるように、対面してそれを読んだ。
心地良さそうな笑顔と共に、ヴァイオリンの音が流れた。
あんなにHappyなねずみくんのチョッキは、初めてだった。
読み終えて、
同じ笑顔で笑った。
でも、彼には時間が無かった。
だから、今日の約束を交わしたのだが。
俺は、やれるだけの事をやった。
それでもそうならないのであれば、
そういうことなのだろう。
◆
その代わりにそこ居たのは、シンガーだった。
そのソウルフルな歌声は、圧巻だった。
一時間、
すぐそばで見た。
自信があるとか無いとか、
度胸があるとか無いとか、
そんな次元の話じゃ無かった。
今までで考えていたこと全部、
かき消されてしまうような歌声だった。
圧巻
としか言いようがない。
彼は、すぐ傍に座り込む俺に向かって、歌い続けた。
視線をそらしたら、声に潰されそうだった。
みるみるうちに、1ドル札が投げ入れられた。
俺は、
これを忘れていたのかもしれない。
俺はストリートミュージシャンだった時、
誰よりも大きな声で歌いたかった。
隣に並ぶシンガーを、声でぶっ飛ばしたかった。
ハングリーだった。
忘れていた。
日本に帰れば、
俺の路上には、多くのお客さんが来てくれる。
忘れていた。
あの頃のソウルを。
鍛え直そう。
歌声を。
そして、
歌うように読めばいい。
初めてだった。
絵本を抱えて路上に出たのに、
路上をやらなかった日は。
トランクを開ける気にもならなかった。
自分もストリートパフォーマーである事を、話す気にはならなかった。
路上最終日、
路上のSoulをアメリカに見た。
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坂口慶
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もうすぐ帰国ですね~
その直前とも言える日に、
素晴らしい出会いがありましたね
色んなことをいっぱい吸収して
祝福ですね
日本でそのお土産を
溢れるばかりに流して下さいね
楽しみです
投稿: あいこ | 2009年5月25日 (月) 02時32分
本当に出会いは不思議ですね。ヴァイオリンの彼は、けいたろうさんの心の片隅に、ずっと住み続けるのでしょう。でも、さらに素敵な出会いが、次々と押し寄せてくるのでしょうね。
投稿: mammy | 2009年5月25日 (月) 22時42分